NPO法は、平成23年に所轄庁の変更、認定事務の移行、申請手続の簡素化・柔軟化、会計の明確化、認定基準の緩和及び認定の効果の拡充等の措置が講じられましたが、同改正法附則19条の検討規定により、NPO関係団体の要望を踏まえて、超党派の議員によるNPO議員連盟において検討が行われ、NPO法人の設立及び運営に当たって必要な手続等について改正が行われ、平成28年6月7日に公布されています。この改正法は、一部を除いて平成29年4月1日から施行される予定です。
そこで、記事作成時点(平成29年2月6日)で判明している情報をもとに、改正による変更点の概要をまとめましたのでご利用ください。
1.設立に関する変更点
1-1 認証申請時の添付書類の縦覧期間の短縮等(第10条第2項等関係)
認証申請時の添付書類の縦覧期間が短縮されます。これによりNPO法人がこれでよりも約1カ月短期間で設立できるようになります。但し、国家戦略特区である兵庫県、神戸市ではもともと短期間でNPO法人が設立できるようになっているので、改正によりさらに短縮されるわけではありません。
○NPO法人の認証の申請手続における添付書類の縦覧期間を1月間(現行2月間)に短縮されました。
○添付書類はインターネットの利用による公表が可能とされました。
※兵庫県は国家戦略特区(地方創生特区)に指定され、関西圏国家戦略特区域会議で作成された区域計画が平成27年10月20日に内閣総理大臣の認定を受けたため、平成27年10月30日からNPO法の特例が適用されており、インターネットの利用により受理日から2週間公表されることとなっています。よって、兵庫県内で設立予定のNPO法人には影響はありません。
関連Link:兵庫県 https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk12/index.html
2.運営に関する変更点
2-1 事業報告書等の備置期間の延長等(第28条第1項関係)
事業報告書等の備置期間が約5年に延長されました。
これにより、NPO法人は、これまでより長期間事業報告書等を備え置かなければならなくなりました。
○事業報告書等とは①事業報告書、②活動計算書、③貸借対照表、④財産目録、⑤年間役員名簿、⑥社員名簿(前事業年度末日における社員のうち10人以上の者の氏名等を記載した書類)のことですが、NPO法人が事業報告書等を事務所に備え置く期間が、約5年(現行:約3年)に延長されました。
○NPO法人から提出された事業報告書等を所轄庁において閲覧又は謄写できる期間を、過去5年間(現行:過去3年間)に延長されました。
2-2 登記事項から「資産の総額」が削除されます(組合等 登記令を改正予定)
変更登記の負担を軽減するため、NPO法人の登記事項から「資産の総額」が削除されます。
その代わりに、2-3により貸借対照表を公告することとなりました。
2-3 貸借対照表を作成後遅滞なく公告することとなりました(新法第28条の2関係)。
資産の総額が登記事項から削除される代わりに、貸借対照表を公告することとなりました。
公告方法 | 公告期間 | 要旨の公告 (※1) |
---|---|---|
官報に掲載する方法(第1号) | 一度掲載すればよい | ○ |
日刊新聞紙に掲載する方法(第2号) | 一度掲載すればよい | ○ |
電子公告(第3号) | 約5年間 | × |
法人の主たる事務所の公衆の見やすい場所に掲示する方法(第4号) | 公告開始後1年(内閣府令で規定予定) | × |
※1 貸借対照表の要旨を公告するだけで足りる場合は「○」印をつけています。なお、貸借対照表の要旨とは、例えば、掲載金額の単位を「千円」とすることです。
2-2、2-3の変更について、施行日は平成30年10月1日が予定されており、3月決算の会社は、平成29年度までは資産の総額の登記を、平成30年度からは貸借対照表の公告を、それぞれすることになる予定です。
3.認定制度・仮認定制度関係
3-1 認定NPO法人等の海外送金等に関する書類の事後届出への一本化等 (新法第72条第2項関係)
認定NPO法人等による200万円超の海外送金等については、その都度、事前に書類の備置き及び所轄庁への提出が課せられていました。こうした事務作業が法人の負担となっていたことから、事前提出等を不要とし、金額にかかわらず毎事業年度1回の事後提出とする(第54条第2項第3号、内閣府令で規定予定)こととなります。
3-2 「仮認定特定非営利活動法人」を「特例認定特定非営利活動法人」に名称変更(第2条及び第3章関係)
「仮認定」という名称では寄付を集めにくいことから変更されました。
3-3 役員報酬規程等の備置期間の延長等(第54条第2項等関係)
○認定NPO法人が役員報酬規程等を事務所に備え置く期間を、「作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日までの間」(現行:翌々事業年度の末日までの間)に延長するされました。
○認定NPO法人から提出された役員報酬規程等を所轄庁において閲覧・謄写できる期間を、過去5年間(現行:過去3年間)に延長することとされました。
4.その他
4-1 内閣府NPO法人ポータルサイトにおける情報の提供の拡大(新法第72条第2項関係
所轄庁及びNPO法人は、内閣府ポータルサイトにおいて、特定非営利活動法人の事業報告書その他の活動の状況に関する情報の公表に努めるものとすることとされました。
関連Link:内閣府NPOホームページ https://www.npo-homepage.go.jp/
5.まとめ
認定、仮認定NPOではないNPOで、最も影響が大きいのは、資産の総額の登記が不要になることと公告が必要になることでしょう。官報公告による場合、現在会社の決算報告は2枠で7万3000円程度です。官報公告による場合は費用負担が大きくなるので、取り扱いが明瞭になったとき、公告方法を変更したほうがよいでしょう。
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