休眠担保を抹消したいときの手続き

1.休眠担保とは
抵当権によっては、数十年も前に設定されたまた、担保権がついている場合があります。
中には大正時代や明治時代に債権額が100円に満たない金額でされているものもあります。
このように古くに設定され放置されている担保権を「休眠担保」と呼んでいます。

2.不動産登記法70条と抹消登記請求訴訟
担保権を抹消する手続きは、所有者と担保権者が共同して行う必要があります。しかし、休眠担保のような権利が眠ってしまっている担保権は、担保権者の所在が分からなくなっており、共同して行うことが容易ではないことが多くあります。また、眠ってしまっている権利を保護する必要性も高くはないため、不動産登記法70条は、本来は、担保権者の協力がなければ担保権の抹消できないけれども、一定の要件を備えた場合は所有者単独で休眠担保を抹消することができるという規定を設けました。

○不動産登記法  登記義務者の所在が知れない場合の登記の抹消)
第70条 登記権利者は、登記義務者の所在が知れないため登記義務者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法 (平成23年法律第51号)第99条 に規定する公示催告の申立てをすることができる。
2 前項の場合において、非訟事件手続法第106条第1項に規定する除権決定があったときは、第60条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独で前項の登記の抹消を申請することができる。
3 第1項に規定する場合において、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第60条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。同項に規定する場合において、被担保債権の弁済期から20年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも、同様とする

 また、不動産登記法63条1項では、「申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる」とされており、裁判で確定判決を得た場合も、一方当事者だけで担保を抹消することができるという例外が設けられております。

3.単独で休眠担保を抹消する4つの方法

 上で書いた担保の抹消方法をまとめると次の4つになります。なお、(1)から(3)は債権者が所在不明であることも要件となっております。

  • (1) 公示催告の申し立てをして、除権決定を得たとき(70条第1・2項)。
  • (2) 被担保債権が消滅したことを証する書面を添付したとき(70条3項前段)
  • (3) 弁済期から20年を経過し、かつ、損害金などを含む債権の全額を供託したとき(70条3項後段)
  • (4) 確定判決を得たとき(63条1項)
(1)の方法

 登記されている担保権が実体法上消滅しているにも関わらず担保権者が所在不明である場合は、裁判所から、届出をしないときは当該権利につき失権する旨の催告をしてもらうことができます。そして、担保権者が、この催告に対して一定期間内に届け出がなかった場合、裁判所は、その権利を失権させる旨の決定(除権決定)をします。所有者などの担保の設定者は、登記申請時にこの決定書を添付することによって、単独で抹消登記をすることができます。

(2)の方法

 すでに被担保債権の全額を返済するなどして、その債権証書を所有している場合には、所有者単独で抹消登記をすることができます。このとき、債権証書と最後の2年分の利息等の完全な弁済を証する情報を添付する必要があり、この形式的要件を備えているときは、この方法が簡便です。

(3)の方法  

 債権の全額を供託し、その供託書などを添付することによって、所有者などの担保の設定者から単独で抹消登記を申請するものです。もっともよく利用される方法です。ただし、被担保債権の額が多い場合は、それに応じて供託金の額も高額になるため、他の方法も検討する必要があろうと思われます。

(4)の方法

 担保権者を相手に担保権の抹消登記請求訴訟を提起し、その確定判決を得る方法です。担保権者の所在が知れない場合は、不在者財産管理人等の選任も必要です。

 

4.まとめ

 休眠担保の抹消は、事案によってはとても複雑です。 しかし、担保権のついている不動産は一般的には市場価値はありませんし、担保権付きの不動産を担保に新たに融資を受けることも容易ではないと思われます。 休眠担保について困ったときはご相談ください。

休眠担保の抹消費用目安

(3)の手続(供託+抹消登記)   70,000円(実費は除きます)

(4)の手続(裁判+抹消登記)   200,000円(実費は除きます)

 

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