商業・法人登記Q&A

商業法人登記でよくある質問をまとめましたのでご利用ください。

 

1.会社設立に関するもの

  • 株式会社設立までの流れを教えてください

    会社設立までにはいくつかの様々なプロセスがありますが、もっともシンプルな会社の場合は、次の5つの段階にまとめることができます。

    ①設立準備

    本店所在地や商号、出資額や役員などを決めます。この段階で設立後の許認可が必要であるかどうかも調べておくとよいでしょう。

    ②定款の作成と認証

    定款を作成して公証役場で公証人の認証を受けます。

    ③出資の履行

    出資金を払い込んだり、現物出資がある場合にはその引き渡しをします。

    ④未決事項の決定

    登記に必要な事項でまだ決めていない事項があれば、その内容を決めます。

    ⑤登記申請手続

    会社設立の登記申請書を作成し、管轄法務局にて申請します。

     

  • 資本金はいくら必要ですか?

    会社法が施行されてから最低資本金制度がなくなり、1円から会社を設立することができるようになりました。

    会社法施行前は、有限会社は出資金300万円、株式会社は資本金1000万円という最低限度があったので、300万円や1000万円で設立される方が多くいました。

    しかし、現在は出資金についての基準がなくなりましたので、極端にいえば1円でも会社を設立することができることになりました。

    しかし、資本金は会社を当初運転していくために必要ですから、1円のようにあまりにも低額にするかどうかは慎重にご判断ください。

  • 出資金を決めるポイントはなんですか?

    会社法施行によって出資金の額の制限がなくなりましたので、出資金の額をどうすればいいのかよくご質問を受けるようになりました。
    出資金の額を決めるときは、次のようなポイントに踏まえてご検討下さい。

    会社の運転資金や設備投資がどの程度必要か?

    資本金をあまりにも低い額にしてしまうと資金がショートしてしまします。会社設立後の当面の運転資金なども視野に入れ、資本金はある程度余裕を持たせる必要があります。

    許認可が必要か?

    建設業や労働者派遣事業などのように、事業内容によって、何らかの許認可を必要とすることがあります。そして、中には許認可を受けるためには、資本金がいくら以上という形式的要件が課せられていることがあります。

    このような要件が課せられているときは、資本金をその額以上の額にしておく必要があります。

    資本金を1000万円以上とするか

    資本金が大きくなると納税額に影響することがあります。
    まず最初のボーダーラインが資本金1000万円です。

    資本金が1000万円に満たないときは、1期目、2期目の消費税の納税義務がないため、2年間は消費税の納税額を免除されるという節税メリットがあります。この消費税の節税メリットを受けるには、資本金を1000万円未満としておく必要があります。

    また、法人住民税の均等割税金(所得に関わらず徴収される税金で、その額は会社の資本金、従業者人数によって決まる)が1000万円を境に変わりますので、この点も考慮に入れる必要があります。

  • 現物出資とはなんですか?

    現物出資とは、車や機械などの動産・工場やその敷地などの不動産・株式などの有価証券、特許など、金銭以外の現物をもって会社に出資する方法です。

    「法人化したいんだけど、資本金が準備できない」

    というだけではなく

    「相続税と所得税、総合的に税負担を減らしたい」
    「会社の債務超過を解消したい」

    という場合にも利用できる場合があります。

    【こちら】もご参考にしてください。

  • 株式会社にはどのような役員を置く必要がありますか?

    一番シンプルな会社ですと取締役が1名いればいいです。

    取締役を2名以上にしたときは、代表権のある取締役(代表取締役)も決めます。代表取締役を無理に決める必要はありませんが、その場合は、全ての取締役が会社を代表することになってしまいますので、望ましくないことの方が多いと思います。
    また、この他に,監査役会計参与といった役員を置くことができます。

    取締役以外は、すべて置く必要はなく,部分的に選択することができます。
    ただし,会社の機関設計や組み合わせによっては制限がある場合があります。

  • 取締役会を設置したときと設置しなかったときの違いはなんですか?

    昔は株式会社は取締役会が必須の機関でしたが、平成18年以前の会社法施行時に有限会社を廃止して、株式会社の機関設計が柔軟化しました。

    取締役会を設置したときのメリット・デメリットは次のとおりです。

    取締役会設置のメリット・デメリット
    取締役会設置のメリット取締役会設置のデメリット
    1.大規模な会社であっても,株主総会を開催することなく,取締役会で迅速に会社経営における具体的な意思決定をする事が出来る。1.役員が最低4名(取締役3人・監査役1人)必要になる。
    2.中小規模の同族会社でも,取締役会を置くことにより対外的な信用を高める事が出来る。2.株主総会の招集通知を原則書面でしなければならないなど株主の利益に配慮した運営が必要になる。
    3.特定の取締役の専断を防止することが出来る。

    なお、取締役会を設置しなかったときのメリット・デメリットはこの反対になります。

  • 役員を決めるときに最初に決めることはなんですか?

    役員を決めるときは、まずはじめに、取締役会を設置するかどうかをきめておいてください。この設置の有無によって,機関設計が大きく異なるからです。

    取締役役を設置した会社と設置していない会社との比較
     取締役会非設置取締役会設置
    取締役の人数1名以上3名以上
    監査役,会計参与の要否不要いずれか1名以上必要
    代表取締役の要否選任しなければ,取締役全員が会社を代表する
    選任した場合は,代表取締役のみが会社を代表する
    取締役の中から必ず1名以上選任する必要あり
    株主総会で決議可能な事項この法律に規定する事項,及び,株式会社の組織,運営,管理その他株式会社に関する一切の事項この法律に規定する事項,及び,定款で定めた事項

    上の図を見ていただいて分かるように、取締役を置くか置かないかで最低限度必要な役員の人数が異なります。

    取締役会を設置しないときは、会社の役員は取締役1名のみでも結構です。
    しかし、取締役会を設置したときは、会社の役員は取締役が最低3名、監査役または会計参与が最低1名の少なくても4名以上は必要です。

  • 役員の資格に制限はありますか?

    以下の者は役員になれないとされています。

    1. 法人
    2. 成年被後見人,被保佐人,又は外国の法令上これらと同様に扱われている者
    3. 会社法,中間法人法,証券取引法又は,破産法等の罪を犯し,刑に処せられ,その執行を終わり,又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しないもの。
    4. 上記3に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し,禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者。

    上に記載のない者、たとえば未成年者でも会社の役員になることができます。

  • 役員の任期はどのようにすればいいでしょうか?

    取締役・監査役の任期の原則は次のとおりです。

    取締役の任期は約2年
    監査役の任期は約4年

     しかし、全ての株式について譲渡制限を設けている会社は例外を設けることができ、取締役も監査役も最大で約10年まで延長することができます。

     

    任期の自由度が高くなっておりますので役員の任期をどうするか悩まれる方もいらっしゃると思います。
    役員の任期設定で迷われたときは、次の場合に従ってご検討ください。

    取締役が1人の場合(取締役と株主が同一人)

    この場合は,役員交代の手続を軽減するために任期を10年にすればいいと思われます。

    ただし,任期満了までの期間が長いため,次に役員変更をすることを忘れないようにする必要があります。また,役員変更など何らの登記をせず,最後に登記してから12年を経過した場合は,みなし解散の登記がされることがありますので注意が必要です。

     

    取締役が2人の場合(親族等の取締役が含まれる場合)

    取締役が身内であるなど信頼が置ける場合はある程度任期を長期にしても良いと思います。例えば名目上子どもに取締役に就任してもらうケースが考えられますが,その場合は登記手続きの煩雑さとコストを考えるとある程度は長いほうがいいかもしれません。

    ただし,たとえ親子間であっても紛争が生じる可能性があることは言うまでもありません。会社の意思決定に支障をきたすことがあったり,株主が取締役を解任したい場合長期にすることで,取締役の残りの任期分の報酬額に相当する損害賠償請求を受ける可能性もあります。

     

    取締役が2人以上の場合(親族以外の取締役が含まれる場合)

    この場合は,それほど長い期間にはしない方がいいかもしれません。たとえば,経営をしていく上で役員同士のトラブル等が生じ,解任に発展してしまった場合,解任に正当な理由がない限り,残りの任期分の役員報酬の支払を求められるリスクがあります。

    家族経営であればこうした心配をする必要はあまりないかもしれませんが,第三者が集まって経営する場合には伸長した場合のリスクも考慮したうえで任期を決定してください。

    また,こうしたリスクの面だけでなく,任期を満了し法務局での手続きを行うことが,役員同士の意思確認を行う機会にも繋がります。

     

    会社の構成と将来の展望を踏まえた上で,自分たちの会社にとって最適な期間を設定してください。

  • 未成年者でも会社の役員になれますか?

    未成年者でも会社の役員になることができます。

    しかし、役員への就任は、会社との委任契約によることになりますので、未成年者が単独で行うことができず、親権者が代理したり、同意をする必要があります。

    ただし、会社の代表取締役になるような場合は印鑑証明書を提出しなければなりませんが、15歳にならないと印鑑登録を認めなことが多いようですのでご注意ください。

  • 監査役を置く必要がありますか?

    監査役は必ずしも必須ではありません。

    会社法施行以前に株式会社を設立するためには,監査役を1名以上集める必要がありました。しかし,平成18年5月施行された会社法では,監査役を置かなくても株式会社を設立することが可能となりました。

    ただし,設立する株式会社が取締役会を設置する場合には,監査役を1名以上置く必要があります。勿論,取締役会を設置しない場合であっても,任意で監査役を置くことは可能です。

  • 定款とはなんですか?

    定款とは、会社の組織・運営に関する根本規定のことです。
    会社の組織や運営は、法律で決められていること以外は、会社自身に委ねられています。そこで、会社を設立するときは、発起人全員で、定款という根本規定を作成し、会社の組織や運営方法を決めておくことで、設立後の会社の運営などをスムーズにします。

    定款の内容は会社によって異なりますが、取締役会を置かない会社では、たとえば次のように定款の内容をまとめます。

    取締役会の設けない会社の定款例
    番号この章に含まれる内容
    第1章 総則商号、目的、本店所在場所、広告の方法
    第2章 株式発行可能株式総数、株式の譲渡制限など株式に関する事項をまとめる
    第3章 株主総会株主総会の招集時期、招集方法、議長、決議方法など株式総会の運営に関する事項をまとめる
    第4章 取締役取締役の人数、選任や解任方法、任期、報酬などについてまとめる。
    第5章 計算事業年度や剰余金の配当方法など、主に会社の計算に関わるものについてまとめる
    第6章 附則最初の事業年度、発起人など、これまでに定めていなかった事項についてまとめる
  • 定款ではどのようなことを決める必要がありますか?

    定款は、絶対的記載事項と言われる最低限必要とされる事項が決められていないと定款そのものが効力を有しませんので、絶対的必要事項は必ず定める必要があります。

    ■絶対的記載事項
    ①目的
    ②商号
    ③本店の所在地
    ④設立に際して出資される財産の価額または最低額
    ⑤発起人の氏名または名称および住所
    ⑥発行可能株式総数

    絶対的記載事項以外に、定款には、記載しないと効力がないもの(相対的記載事項)、記載するかどうかが任意であるもの(任意的記載事項)がありますので、必要に応じてこれらの事項を追加します。

    ■相対的記載事項の例
    ①現物出資などの変態設立事項
    ②取締役選任についての累積投票廃除
    ③株券発行
    ④株主総会,取締役会及び監査役会招集通知期間短縮
    ⑤取締役会、監査役(監査役会)、会計参与、会計監査人などの機関の設置

    ■任意的記載事項の例
    ①株主名簿の基準日
    ②株主名簿の名義書換手続
    ③株券の再発行手続
    ④定時株主総会の開催時期
    ⑤株主総会の議長
    ⑥議決権の代理行使
    ⑦取締役,監査役の員数
    ⑧代表取締役,役付取締役(会長,社長,副社長,専務取締役,常務取締役等)
    ⑨取締役会の招集権者
    ⑩事業年度
    ⑪公告の方法

  • ローマ字を含んだ商号を登記することはできますか?

    Q 株式会社の設立登記をしたいのですが,あらかじめ提出する代表取締役の印鑑はどのようなものでもよろしいでしょうか。

    A ローマ字を含んだ商号であっても登記することができます。
    大文字又は小文字のどちらも使うことができます。
    また、下記の符号を用いることもできます

    (商号の登記に用いることができる符号)

    記号名称使用例

    アンバサンド株式会社T&A
    アポストロフィー株式会社T’ SHOP
    コンマ1,2,3株式会社
    ハイフンT-A株式会社
    ピリオド株式会社TA.com
    株式会社MAX.
    中点株式会社T・A

    ※(3)の符号は,「.」(ピリオド)を文末に用いる場合を除き、商号の先頭又は末尾に用いることはできません。
    ※ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り,当該単語の間を区切るために空白(スペース)を用いることもできます。

  • 会社の目的はどのように決めればいいですか?

    目的は「何をする会社なのか」を明確にするために、必ず決めなければならない時効です。

    目的は1つでも構いませんが、会社が行える事業は、定款に記載された目的の範囲内に限られていますので、今は行っていないけれども将来行うかもしれない事業がある場合は、予め記載しておいた方がいいでしょう。

     

  • 事業年度はどのように決めればいいでしょうか?

    会社は、少なくても1年に1回、決算書を作成し、会社の利益や財産状況を明らかにしなければいけません。これを決算と言います。

    事業年度とは、この決算のための計算期間であり、4月1日から3月31日まで、10月1日から9月31日というように1年を超えない範囲で決めることができます。

    事業年度は会社が任意で決めることができますので、必ずしも4月1日から3月31日などに合わせる必要はなく、会社の繁忙期を避けるなどして、会社の決算がしやすい時期を選ぶといいでしょう。

  • 印鑑登録にはどのような印鑑が使えますか?

    Q 代表取締役の印鑑はどのようなものを準備すればよろしいでしょうか。

    A 株式会社の代表取締役などは,あらかじめその印鑑を登記所に提出しなければならないとされています。

    登記所に提出する印鑑の大きさは,辺の長さが1センチメートル超~3センチメートル未満とする必要があります。

    innkan

  • 出資金の払込はどのようにすればいいですか?

    発起人名義の銀行口座に出資金を払い込んでください。

    会社の設立準備段階では、会社はまだ成立していないため、株式を引き受けた者は、会社の設立準備に携わっている発起人名義の銀行口座に出資金を払い込みをします。

    銀行口座は、今使っている銀行口座でも、新たに口座を開設していただいても、どちらでも結構です。

    しかし、会社の設立登記の際に、出資金の払い込まれた銀行口座の通帳を提出しますので、明細を法務局に提出したくないときは、新たに口座を開設して下さい。

    出資金の払込に関して注意する点は下記のとおりです。

    1.出資金の払込は定款作成後にしてください。

    2.出資者が複数いる場合は、出資者ごとに出資金を払い込んでください。

    3.「払込」という形式が必要ですので、出資金以上の残高があるだけはいけません。必ず一度は口座への払込をしてください。

     

2.役員変更に関するもの

  • 任期満了後も同じ役員ですが、役員変更登記が必要ですか?

    任期が満了したあとも、引き続き同じ人が役員となったときであっても、再度役員変更登記を行う必要があります。

    このようなときは、「重任」の登記をします。

  • 役員の任期は10年まで伸ばせると聞きましたが、どうすればいいですか?

    平成18年の会社法の施行にともない、株式の全部について譲渡制限の規定を設けている会社であれば、定款を変更することによって役員の任期を約10年まで伸長する事ができるようになりました。

    役員の任期の伸長は、その旨を定款に記載しないと効力を有しないとされています。

    従って、任期を伸長するときは、株主総会を招集して、役員の任期を伸長する定款の規定を設ける(又は変更する)株主総会の特別決議を経る必要があります。

    コストカットのために有効な方法ではありますが、役員の任期を伸長したときのデメリットもあります。

    たとえば、経営者と役員との間に紛争が生じたため役員を解任することがありますが、「正当な理由」無く解任した場合には、解任された役員から会社に対して損害賠償請求がなされる場合があります。

    従って、予防法務としては、あまり長期間の任期を定めない方が良いと言えます。

    なお、【こちらのQ&A】もご参照ください

  • 取締役を減らして1名にしたいのですが制限はあるのでしょうか?

    平成18年の会社法施行後は、会社の機関設計を柔軟にすることができるようになりましたので、会社には最低限1名の取締役がいれば良いとされています。
    しかし、次の場合などは複数名の取締役を置く必要があります。

    定款で取締役を2名以上置くとの規定がある場合

    取締役会を設置している場合

    では、これらの場合にどのようにして取締役の人数を減らすのでしょうか?

    定款で取締役を2名以上置くとの規定がある場合

    定款で取締役を2名以上設置することとなっているときは、株主総会を開催し取締役の人数を変更する定款変更の決議を行った後、取締役の数を減らすことになります。

    取締役会を設置している場合

    取締役会を設置しているときは、最低限3名以上の取締役を置くこととされていますので、株主総会にて、取締役会を廃止する定款変更決議を行った後、取締役の人数を減少させることとなります。

     

  • 役員の住所が変わりました。登記するする必要がありますか?

    役員によっては、住所が変わった場合、役員の住所を変更する必要があります。
    住所変更の登記をしなければならない役員は次のとおりです。

    ・代表取締役
    ・有限会社の取締役

    役員の住所変更登記はお忘れになっていることが多いように思われますが、法律上は変更があったときから2週間以内に登記をしなければならないことになっておりますのでご注意ください。

     

3.その他
・定款変更はどのようにすればいいですか
・役員の報酬はどのように定めますか

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