秘密証書遺言~遺言内容は誰にも秘密~

 自筆証書遺言は自宅に保存中に誰かに見られてしまう可能性がありますし、公正証書遺言は、公証人や証人に遺言内容を知られてしまいます。
 その名のとおり、秘密証書遺言は遺言内容を秘密にしたいときに有用とされている遺言の方式です。
 秘密証書遺言は一人で作成して、公証人に提出して、公証人と証人2人以上の面前で自分の遺言書であることを確認するなどして作成します。手続きとしては自筆証書遺言と公正証書遺言の中間にあるような様式の遺言です。

1.秘密証書遺言の作成手順など

1-1.遺言書の作成

 自筆証書遺言と同様に遺言者が作成します。しかし、自筆証書遺言とはことなり遺言者が自書する必要はありません。したがってパソコンを利用して作成しても、第三者に作成してもらっても構いません。
 また、署名・捺印は遺言者が行う必要があります。
 秘密証書遺言は、遺言の全文を自筆する自筆証書遺言と比べると、パソコンを使えば比較的容易に作成できると思いますが、公正証書遺言は、公証人が遺言を作成してくれるうえ、本人が遺言書に署名できない場合に、本人に代わって公証人に署名してもらうこともできるため、全文手書きでなくてもいいことは、それほど大きなメリットにはならないかもしれません。

1-2.封入と封印

 自筆証書遺言は必ずしも封筒に入れておく必要はありませんでしたが、秘密証書遺言は、封筒に入れて、糊付けした部分に遺言書に捺印した印鑑と同じ印鑑を押して封印します。
 なお、一般的には封筒を利用しますが、封筒でなくても構いません。

1-3.公証人への提出

 遺言書を入れた封筒を公証人に提出し、公証人証人2名以上の前で、この遺言が自分のものであることなどを伝えます。
 その後、提出日と公証人が遺言者の申述を封紙に記載した後、公証人と証人、遺言者で署名・捺印をして完成させます。
 なお、秘密証書による遺言方式に関する記載についての手数料は、定額で1万1000円となっており、財産の金額により変動する公正証書遺言に比べ、費用面では大きなアドバンテージがあります。

1-4.家庭裁判所での検認

 
 自筆証書と同様に、秘密証書遺言は家庭裁判所で検認をしてもらう必要はあります。

2.秘密証書遺言のメリット

2-1.遺言内容を秘密にできる

 遺言内容を秘密にできることが、秘密証書遺言の最大のメリットです。
 内容は秘密ですが、遺言したことは公証人や証人が関与することから存在自体は明確にすることができます。

2-2.変造のおそれがない

 秘密証書遺言は、遺言をされた方が封筒に入れて封印し、封筒には公証人・証人・遺言者が署名をします。封印されておりますので、遺言書を変造される恐れはありません。

2-3.署名・捺印ができればいい

 秘密証書は遺言書と封筒に署名・押印をする必要はありますが、自筆証書のように全文を自筆する必要はありません。パソコンで作成したり、第三者に書いてもらっても結構です。

3.秘密証書遺言のデメリット

3-1.公証人の関与、証人2名以上の手配が必要

 秘密証書遺言は遺言者が作成した遺言書を、公証人に提出して、様々な確認をしなければいけません。従って自筆証書に比べると手間や費用が掛かってしまいます。公証人の手数料は定額で1万1000円ですので、公正証書遺言に比べると低額にすることができます。
 また、秘密証書遺言は証人2人以上の立会いも必要とされています。

3-2.遺言書が発見されないおそれがある

 遺言書の作成過程で公証人や証人が関与していますので、作成されたことは明らかとなっても、遺言書自体を紛失してしまった場合はどうすることはできません。また、相続人にこの存在を知らしていない場合は遺言書が発見されないこともあります。
 この点、公正証書遺言は原本が公証人役場に保存されていますし、検索サービスもありますので、紛失してしまったとしても安心ですし、遺言の有無を検索することも容易です。

3-3.遺言が無効になるおそれがある

 秘密証書遺言では、公証人が関与しますが、公証人は遺言の内容には関与しないので、共同遺言になっていたり、署名や押印をしていない場合など遺言が無効になってしまう場合があります。作成するときは、事前に専門家にチェックしてもらったほうがよいでしょう。

3-4.家庭裁判所の検認が必要

 秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同様に、相続が発生した後に、裁判所の検認を受ける必要があります。

4.まとめ

 秘密証書遺言は、遺言内容は秘密にしたいというときに有用といわれています。
 しかし、公正証書遺言でも公証人や証人が信用できる人にしておくことで遺言内容を相続人に秘密にすることができます。
 さらに自筆証書遺言であれば、黙っていたら、遺言したことに気づかれることは少ないでしょう。
 このように、遺言の内容を秘密にしたいから秘密証書遺言をするのではなく、遺言者ひとりひとりの事情に応じて、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言のどれにするか選択することが必要でしょう。

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